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12 Oct.06 thu
ニッパーの記事が意外にも(?)好評だったので、引き続き 下の記事でニッパーの台に載せているSPレコードは、ロシアのバス、フェオドール・シャリアピン(1873-1938)のもの。世紀の大歌手と呼ばれたシャリアピンですが、亡くなる2年前の1936年に訪日しています。彼のレコードはロシアで吹き込まれた20世紀初頭の古い物からあるのですが、来日の折に日本ビクターに1枚のレコードを吹き込みます。これがシャリアピンが残した最後の録音で、曲目はシャリアピンの十八番中の十八番、「ヴォルガの舟歌」とムソルグスキーの「蚤の歌」です。 このレコードはビクターの洋楽愛好家協会盤としてかなりの数がプレスされていますが、シャリアピンの芸術の最後を飾るにふさわしい名演奏です。もっとも、達者な技巧でカバーしていますが、やはり寄る年には勝てず、歌自体を楽しむのならもっと若い頃の声に張りがある頃の録音の方がお勧めなのですが・・・ さて、この来日の折、シャリアピンは持病の虫歯が痛み(一説には入れ歯の調子が悪かった)、ずっとあごを押さえていたそうです。滞在先の帝国ホテルの料理長に「歯の調子が悪くても食べられる肉料理を出して欲しい」と要望し、考え抜いた料理長が出したのが薄切りの牛肉をたまねぎに漬け込んで柔らかくしたステーキでした。これがシャリアピンに大変好評でそのまま「シャリアピン・ステーキ」として名前が残ったと言うことです。 ですから、日本以外で「シャリアピン・ステーキ」といっても・・・通じないかも知れません。せっかく名歌手の名前がついたステーキなのに、ちょっと残念な気もしますが・・・ もう一人、料理に名前を残した歌手にネリー・メルバ(1861-1931)がいます。メルバはオーストラリア生まれのソプラノで、フランスで修行を積んだ後、1887年にブリュッセル・モネ劇場でジルダ役(リゴレット)でデビューします。写真はそのときのもの。やや遅いデビューでしたが、2年後コヴェント・ガーデンでジュリエット役(ロメオとジュリエット)で大成功を収め、名声を確立します。 レコードは1904年に彼女のロンドンの自宅で録音されたものから、26年に引退するまでの四半世紀に亘りのこされており、コヴェント・ガーデンでの告別演奏会の模様はライブ録音されその中でメルバのスピーチを聞くことができます。 さて、メルバがその名を残したのはメルバ・トーストとピーチ・メルバです。どうやらともにメルバの成功にあやかってつけられたようですが、ピーチ・メルバのほうはサヴォイホテルの料理長だった、エスコフィエが考案して実際メルバに出した、と言うことのようです。メルバ・トーストのいわれは・・・なんでしょうね。要は薄切りの食パンをカリッと焼いたものですけど、何でメルバなんでしょうか???あと、ピーチ・メルバのアイスクリームにかけるラズベリーのソースもメルバ・ソースと呼ばれています。なんだかお菓子系が中心のようですが、ひょっとして他にもあるかもしれません。 も一つ、ついでに。英語で"do a Melba"という言い回しがあります。これは、オーストラリアでしか使われませんが、「何回もさよならを言う」という言い方です。メルバが欧州を去ってからも何度もオーストラリア各地でさよなら公演をやったことにちなんでいるそうです。 とはいえ、なんといっても音楽関係で料理の名前に自分の名前を残したのはロッシーニでしょう。フランス料理で「○○のロッシーニ風」というのはゴマンとありますが、困ったことに○○によって何が「ロッシーニ風」なのか変ってくるので、結局何がなんだかわからなくなるのです(笑)。 きっと1936年にロッシーニが生きていれば、「シャリアピン・ステーキ・ロッシーニ風」を考え出していたに違いありません(笑) #
by credenza
| 2006-10-12 21:47
| opera
08 Oct.06 sun
毎週末のように出かける骨董市。 大抵はレコードを探しているのですが、時にはレコード以外にもちょっと面白い物が見つかることがあります。そんな時、持ち合わせと相談しつつ、オプションは、(1)その場で買うか、(2)やめておくか、(3)カードでお金を下ろしにいくか(笑)、の3つです。・・・要は、大抵買ってしまう訳なんですが・・・ この週末見つけてきたのは、犬の人形です。 ちょっと微妙に汚れていたりするのですが、まあこれはこれでいいでしょう。 おそらく世界で一番その姿が印刷された犬。日本では「ビクターの犬」などと呼ばれていますが、名前はニッパーです。もともと「蓄音機の前で耳を傾けている犬」の絵を描いたのは、フランシス・バローという画家ですが、画家の兄が飼っていたのがこのニッパーで、亡くなった主人の声が聴こえてくる蓄音機に耳を傾けているというわけで、グラモフォン社の登録商標「His Master's Voice」となったわけです。 もともと、描かれた蓄音機は家庭でも吹き込みの出来るエジソンの蝋管式の物だったのですが、グラモフォン社がこの絵を買い上げるときに、自社の円盤型レコード用の蓄音機に描きかえられています。ともあれ、この犬、ご多分に漏れずいろんなキャラクターグッズとして登場するのですが、見つけたのはこれ。10インチのレコードを飾るための台です。 やっぱりこのレコード台に飾るのはHMVのレコード。手許にあったシャリアピンを載せてみました。 #
by credenza
| 2006-10-08 06:17
| Gramophone
05 Oct.06 thu
Encounter with Stradivari 2006(ストラディヴァリとの出会い、2006)と銘打ったコンサートに出かけてきました。 日本音楽財団の所有する弦楽器から11本とロンドン音楽学院から借り出したヴィオラ一本の合計12本のストラディヴァリを使ったコンサート。演奏する方も、昨年のエリザベートコンクール優勝のセルゲイ・ハチャトリアン、庄司紗矢香、竹澤恭子、木嶋真優、樫本大進、東京クワルテット他と、普通のコンサートのステージでは絶対に一晩には揃わない顔ぶれです。これで行かない手はありません・・・ プログラムはイザイ、ドホナーニ、モシュコフスキーにシューベルトとメンデルスゾーンと、とりとめの無いものでしたが、これだけの演奏家をそろえるためには仕方ないかもしれません。 しかし・・・やっぱり箱が悪すぎます。ブリュッセルのPalais des Beaux Artsのコンサートホールはでかい上に残響が少なく、室内楽はまるで大きな部屋の隅っこでラジカセを鳴らしているように聴こえがちなのですが、今日もせっかくのストラディヴァリウスの音色が伸びなかったのは残念でした。悪口ついでに・・・ピアノ伴奏はバランスを欠いており、ちょっとあまりいただけませんでした。 もちろん個々の楽器は流石にストラッドなのでその響きの違いを聞き分ける楽しみは大きく、中でも庄司の弾いていた、1715年製の「ヨアヒム」の力強い響きが印象的でした。イザイの「Amitié」を2台のヴァイオリンとピアノに編曲した物を弾きましたが、相方のハチャトリアンの弾く1708年製の「ハギンス」(この楽器は歴代エリザベートコンクール優勝者に貸与されています。)と比べても音により深みと輝きがあり、実に素晴らしい音色でした。ヨアヒムが所有していた5本のストラディヴァリウスのうちの一本で、ひょっとしてヨアヒムが1903年に残した5枚のレコードの吹き込みにも使われた物かもしれない、と帰って来てそっと復刻盤のCDをかけました。 ちなみに、今晩聴けたストラディヴァリをリストしておくと ・ パガニーニ・カルテット(パガニーニが所有していた、弦楽四重奏用セット。 東京カルテットに貸与されている物。中でも特にヴィオラがすばらしい) ・ 1717年 ”サセルノ”(Viviane Hagner) ・ 1696年 ”ロード・アイレスフォード”(チェロ、Josef Karlicek) ・ 1722年 "ジュピター”(樫本大進) ・ 1708年 ”ハギンス”(Sergey Khachatryan) ・ 1700年 ”ドラゴネッティ”(木嶋真優) ・ 1715年 ”ヨアヒム”(庄司紗矢香) ・ 1710年 ”カンポセリーチェ”(竹澤恭子) ・ 1696年 ”アルチント”(ヴィオラ、東京クアルテット) とはいえ、今晩一番目立ったのはどなたかの携帯の着信音。なんとバッハの「インヴェンション1番」でした。ファビオラ女王もいらっしゃってましたが、ストラディヴァリにかぶさる電子音を聴いてどのように感じられたのでしょうか・・・ 日本音楽財団のHPはこちら(楽器の説明もあります。) #
by credenza
| 2006-10-05 23:25
| opera
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by credenza
| 2006-10-02 21:12
| promenade
26 Sep.06 tue
だんだん天気が怪しくなってきたブリュッセル。今日も晴れているかと思ったら、土砂降りの雨。すぐに上がって夕焼けがちょっと綺麗でしたが・・・ 涼しくなって、週末のブリュッセルではあちこちにブロカント(ガラクタ市)が立つ様になって来ました。掘り出し物?があるとは限りませんが、ブリュッセルの物置を総ざらえしたような露天を眺めているのはそこそこ楽しいものです。 このブログにもしばしばブロカントやアンティークマーケットが登場しますが、毎日開いているガラクタ市はご存知のとおり、Place Jeu de Balleです。とにかく人間の作った物なら何でもある、と言われそうなぐらいありとあらゆるガラクタが揃っていて、運が良いとなかなかおいしい掘り出し物に出くわします。 以前、信じられない値段でライカを買ったお話はこのブログにも書きましたし、最近でもちょっと珍しいレコードなどを掘り出しました。某オークションで最低落札価格が数百ユーロのものでも、一枚1.5ユーロだったりするのでやめられません。 ところで、最近このJeu de Balle広場で日本人の方をお見かけすることが多くなりました。ひょっとしてこのブログをご覧になって 女性の方が多いのですが、どうも気になるのが はっきり言って、この界隈はあまり治安がよろしくない場所で、特にガラクタ市などには胡散臭い人も多く出入りしていて要注意なのです。 一応、警察もわかっているのか週末には警官が何人かぶらぶらしていますが、とにかく注意することに越したことはありません。うちの家人にパリのあるプロの骨董商の方(日本人)は「あのあたりはちょっと怖くていけない」と言っていたそうです。(家人が「うちの亭主はほとんど毎週末出かけている」といったら、驚いていたようでした。) 幸い、今のところこのあたりでの観光客の方の被害は出ていないようですが、どうぞお気をつけて、ブリュッセルの骨董市めぐりを楽しんでください。 #
by credenza
| 2006-09-26 22:17
| promenade
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