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23 Aug.08 sat
7月の『あたらしい戦略の教科書』の影響ではありませんが、立て続けに2冊戦略の本を読みました。 一冊目は、名著『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』の続編として出ていた『戦略の本質ー戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ』。3,4年ほど前にハードカバーで出ていたものがこのたび文庫化されたので改めて読み直したものです。 正直いって、前作の『失敗の本質 』には及びませんし、商売上やむを得ないのは理解できますが、あまりにも戦争の帰結をリーダーシップに結び付けている点が気にかかります。また、戦史の逆転に学ぶべきなのに、逆転した側の視点のみが強調され、逆転された側からの分析が乏しいため今ひとつ分析に深さもなく、戦史から「逆転するための戦略の本質」を抽出することに成功しているとは言いがたいです。 面白い本ではありますが、『失敗の本質 』の圧倒的迫力と比べると三段落ちるといわれても仕方がないかもしれません。いずれにしても、「日本の戦略不在に終止符を打つ!」というオビの広告ほどのインパクトはありません。まあ、戦略論の系譜や終章にある戦略にかかわる10の命題は参考にはなりますが。 でもこの本、結構売れているようで、あわせて『失敗の本質』も読まれているとすれば悪くないのではないでしょうか。もっとも、『失敗の本質』の方は勝間和代さんの推薦がオビについているので、それで売れているのかも知れませんけれど。まあこれは美しき誤解というもので、それはどの世界にもありますからそれが悪いわけでは必ずしもありません。 さて、ある本屋で『あたらしい戦略の教科書』と並べられていた菊澤研宗著 『戦略学―立体的戦略の原理』。英語で副題が付いていて、それは”Cubism of Strategy”となっています。本書の内容は、著者が慶応大学の教授であるだけに、教科書的に非常に上手くまとまっており、大変読みやすく判りやすい本となっています。 具体的には、これまでの古典的な戦略論の総決算であるクラウゼヴィッツの戦争論とリデル・ハートの戦略論をベースに、経営論的アプローチからの新しい戦略論について解説した上で、戦略を、(1)物理的直接アプローチ戦略、(2)心理的間接アプローチ戦略、(3)知性的間接アプローチ戦略の3つに分け、これを再構成する形での新しい戦略論として「立体的戦略の原理」について説くという構成となっており、通読すると分野にかかわらず一通り戦略論が学べるようになっており、まさに教科書としても大変良くできているといえるでしょう。 本書の中心は、リデル・ハートの間接的アプローチを超えたところから始まり、第2部の戦略の要素分解を通して、さらにそれぞれの要素を再統合するところが筆者の唱える立体的戦略を展開する部分です。立体的戦略の組み立て方が平易な表現で解説されるとともに、コカコーラとペプシ、ゲーム機をめぐるニンテンドーとソニーのケースなどが取り上げられており、経営学の素人にもとても判りやすくなっています。 ちょっと面白いのは、一旦いわゆる古典的戦略論、すなわち軍事的戦略論からビジネスにおける戦略論までを広く説いておきながら、筆者の唱えるキュービック・グランド・ストラテジー(CGS)の例として挙げられるのがロンメルと山下奉文であるところです。クラウセビッツからのハード中心の軍事的戦略論がポーターの競争戦略論、ブルーオーシャン戦略等を経て因数分解され、それを再構築したCGSの分析例がビジネスの世界からではなく戦史からとられていることは興味深いところで、なんとなく戦略論の輪廻転生との印象を受けました。 最後にはこのCGSをバランスト・スコアカードの考え方に結びつけ、実際の経営戦略への適用の可能性も探られます。 しかし残念ながら著者の主張であるべきこの部分にはあまり説得力が感じられません。そもそもCGSは因数分解された戦略の要素を再統合した物であるべきはずですが、肝心要の戦略要素の再統合にかかわる部分の説明が表層的かつ機械的で、こういっては失礼ですがまともに議論されていないからです。 本来、「どのように戦略の各要素を組み合わせるのか」、こそがCGSの本質であるべきと思うのですが、簡単すぎて逆にうるさくなる数式らしきものがならべられている上、説明はあくまで理論的組み合わせに終始しており、結局は「場合に応じて適宜組み合わせる」という当たり前の結論にしかなっていない様に思われます。CGSの本来目指すところは、これらの要素の組み合わせに一定の法則を見出すか(これは遠慮がちに述べられていますが、法則とまではいいきれず、歯切れが今ひとつよくありません。)、個別の戦略間のダイナミックな連関作用を解説すべきでしょう。これは無理な注文かもしれませんが、どうしても本書が「戦略におけるキュビズム」または戦略への立体的アプローチを掲げている以上、この部分は避けて通れない部分でしょう。 いずれにしても、キュビズムの特徴は、複数の視点から対象を掌握し、それを再構成することであると考えると、複数の視点から戦略の要素を分解することに成功していても、それを再構築するまでには残念ながら至っていないと感じるのは私だけでしょうか。 とはいえ、この本はこれまでの戦略論が軍事的戦略論と経営戦略論のいずれかに分類されてきた戦略論において、軍事、哲学、経営学、経済学の複数の視点からこれをたくみに整理することに成功しています。これがどれほど難しいかは、上の『戦略の本質』のオビがうそ臭くなってしまうことからも明らかでしょう。大抵は、あいまいな形でしか示されていないことが多かったのです。本書はこれまであくまで学術的研究の範疇で扱われてきた「戦略論」とビジネス書などでしきりに取り上げられる「戦略」をつなぐものとして貴重な存在なのです。 筆者は「あとがき」で遠慮深く、本書は「本屋さんにいつも一冊は残っているような息の長い本」になって欲しいと述べています。しかしながら本書は、他の戦略本を読む際にはいつでも参照できるよう手許に置いておくべき、いわば戦略本のレファレンスとして広く読まれるべき本なのです。そして是非次の本ではCGSについてさらに突っ込んだ説明がなされることを期待しています。 2008/08/27追記: この本の著者、菊澤研宗先生のブログにこの書評(?)につき大変うれしいコメントを頂戴しました。
by credenza
| 2008-08-23 23:40
| 読書つれづれ
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